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川辺謙一は鉄道ファンなのか?

<記事公開日>2026年1月9日

<最終更新日>2026年9月16日

鉄道関係者のみなさまへ

このページをご覧いただきまして、ありがとうございます。

鉄道関連の取り組みを広く知ってもらいたい。しかし、川辺謙一に取材や執筆を任せてよいか迷っている。この記事は、そのような方に向けて書きました。

私は、鉄道会社の経営者や技術者、広報担当者の方々から「川辺さんは、鉄道ファンではないですよね?」とよく聞かれます。取材を受ける側からすれば、書き手が趣味の視点で主観的な記事を書かないか、気になるのは当然のことです。そこで、この場をお借りしてお答えします。

仕事では、鉄道ファンの視点に立ちません

私は、交通技術解説者として仕事をするとき、鉄道趣味の視点から意図的に離れています。

正直に申し上げると、私にも鉄道ファンとしての側面はあります。鉄道に興味を持ったのは幼少期で、会社員時代は鉄道旅行を趣味として楽しんでいました。また、鉄道をきっかけに科学や技術、歴史に関心を広げ、国内外を旅して知識を得てきました。

ただし、趣味と仕事では目的がちがいます。だから私は、仕事では両者をはっきり分けています。

趣味と仕事では、目的がちがう

鉄道趣味と私の仕事は、目指すところが異なります。鉄道趣味は、鉄道を自由に楽しむものです。いっぽう私の仕事は、鉄道で起きている事実と、それを支える人の取り組みを、正確に伝えることです。

目的がちがえば、見る範囲もちがいます。趣味の関心は、車両や路線など、鉄道を構成する要素の一部に向かいやすいものです。しかし、鉄道は土木・機械・電気などの多くの要素が連携して動くシステムであり、その根幹には「安全」があります。仕事として鉄道を伝えるには、この全体像を客観的にとらえる必要があります。

私がこのことを強く意識するようになったのは、メーカーの技術者として安全教育を受けた経験と、独立してから20年以上続けてきた取材活動があったからです。拙著『最新図解 鉄道の科学』(講談社ブルーバックス)では、土木・機械・電気の専門家の協力を得て、システムとしての鉄道の全体像を自然科学の視点で説明しました。

最新図解鉄道の科学

鉄道会社の方々からは、「鉄道に興味を持つ人が増えるのはありがたい。ただ、安全への取り組みを理解しないまま、イメージだけで書かれるのは困る」というお話をうかがってきました。私はこの声を重く受け止めています。

鉄道の実像を知るための2つの取り組み

鉄道を客観的に伝えるため、私は次の2つに取り組んできました。

(1)鉄道を支える現場を知る

鉄道の実像は、現場に行かなければわかりません。私は大学・大学院で工学を学び、メーカーで技術者として働いた経験があるものの、鉄道現場での実務経験はありません。そこで、鉄道関係者のみなさまのご協力を得て、現場や人を取材し、ときには作業を体験させていただきました。

電気機関車の運転を体験したときは、下り坂で発電ブレーキが失効し、あわてて空気ブレーキをかけると、雨で動輪が滑りました。レールに砂をまいてブレーキ力を上げると、総重量100トンを超える巨体がガクンと急停車し、添乗していた方が倒れそうになりました。

真夏に蒸気機関車の整備を体験したときは、顔が煤だらけになりました。火室の内部を見せていただくと、光と熱で顔が焼けるようでした。作業後は汗だくで、スポーツドリンクを喉に流し込んでも、飲んだ気がしませんでした。

どちらも、体験して初めてわかったことです。日々これらの業務に向き合っておられる方々には、頭が下がります。

体験しないとわからないことがある

電気機関車の運転体験
電気機関車の運転体験
蒸気機関車の整備体験
蒸気機関車の整備体験

(2)外側から鉄道を俯瞰する

日本の鉄道の立ち位置は、鉄道の外から見ることで明確になります。このため私は、自動車や航空機、船舶といった他の輸送機関の強みと弱みを知り、交通全体における鉄道の役割を把握してきました。また、鉄道整備の背景にある都市計画や国土計画を学び、海外の鉄道を利用し、鉄道関連の国際会議や展示会にも足を運んできました。

こうしたことを繰り返した結果、日本の鉄道の強みと課題が、少しずつ見えてきました。

体験しないとわからないことがある

イノトランス(国際鉄道技術専門見本市)ドイツ・ベルリン
イノトランス(国際鉄道技術専門見本市)ドイツ・ベルリン
第9回UIC世界高速鉄道会議・東京
第9回UIC世界高速鉄道会議・東京

いただいた言葉

このような活動を続けた結果、「鉄道趣味の延長では鉄道は語れない」と痛感しました。先ほども述べたように、鉄道趣味の対象になっているのは、鉄道を構成する要素のほんの一部です。そこで得た知識だけで、鉄道の全体像を語ることは、残念ながら不可能です。

このため私は、鉄道趣味から離れて、仕事をしています。

こうした姿勢は、鉄道や出版の関係者の方々にも受け止めていただいています。

ある鉄道会社の副社長(当時)は、私を「鉄道ウォッチャー」と呼んでくださいました。鉄道とほどよい距離を保ちながら、その現状を見つめているという意味では、そう呼べるかもしれません。

ある出版社の顧問(当時)は、「川辺さんの本を読んで、この人は鉄道ファンではないと直感したから、執筆を依頼した」と言ってくださいました。同じように感じて、お問い合わせくださった企業の方も多数おられます。

以上のことをお話しすると、鉄道関係者の方々はたいてい安心され、取り組みをていねいに説明してくださいます。

ご相談はお気軽にどうぞ

鉄道の取り組みを、趣味の視点ではなく、事実にもとづいて伝えたい。そうお考えの方は、以下のお問い合わせフォームからご連絡ください。内容が固まっていない段階でのご相談も歓迎します。


この記事を書いた人

川辺謙一
川辺謙一交通技術解説者
強固な技術的バックグラウンドを持つ解説者。鉄道・道路・モビリティ・インフラ・DXの「見えない構造」を、意思決定に使える「知」に変換する。