なぜ技術解説をしているのか
本ページでは、私が20年以上にわたって技術解説の仕事をしている理由と背景をお伝えします。
私は現在、「交通技術解説者」と名乗っています。
その業務内容を一言で表すと「技術解説」です。
つまり、技術を一般の人にわかりやすく伝え、技術者と社会のコミュニケーションを促すことが、私の仕事なのです。
なぜ技術解説をしているのか。
なぜその仕事を選んだのか。
この記事であらためてご説明します。
技術者の「論理」と「想い」を知ってほしい

私が技術解説をしているのは、「技術者が考えていることをもっと知ってほしい」からです。
なぜか。理由はシンプルです。
私自身がもと技術者であり、大学・大学院で工学を学んだ経験があるからです。
- 技術者が何を意識しながら、技術を構築するか。
- そのために、どう論理を組み立てるか。
- 何を好み、何を嫌うか。
私は、それらの裏側にある情熱や葛藤を、身をもって知っています。
だからこそ、それらを多くの人に知ってほしいのです。
科学コミュニケーターとしての目覚めと独立

技術解説に目覚めたのは、大学4年生のときです。当時は工学部に所属し、技術者を目指していました。
配属された研究室が小学生向けの公開授業を実施され、私はそのテキスト制作を手伝いました。このとき「専門的な話をどうすれば小学生にわかってもらえるか」という問いに初めて向き合い、「技術開発の第一線に立つよりも、技術を解説する仕事に就くほうが自分に向いているかもしれない」と直感しました。
しかし、その道を一度諦めざるを得ませんでした。当時(1993年)は、まだ日本で科学コミュニケーター(サイエンスコミュニケーター)が職業として認知されておらず、私も知らなかったからです。科学コミュニケーターとは、科学や技術に関することを一般向けに翻訳・解説し、専門家と社会の対話をうながす人のことです。
その後、私は大学院に進学し、メーカーの技術者になりました。ところが、与えられた研究開発の仕事は、自分には合わないことがわかり、「やはり、技術解説のほうが合っているのでは」と気付きました。
2004年に会社を辞めて独立し、フリーランスとしての活動を始めました。このとき、過去の技術的バックグラウンドを活かして、プロの「技術解説者」になったのです。
なぜ「交通」をテーマに選んだのか
「交通」をテーマに選んだのは、多くの人が興味を持ちやすいと考えたからです。私のもとの専門である「化学」は、どうしてもむずかしいイメージを持たれがちです。それにくらべて「乗りもの」は親しみやすく、興味を持つ人が多く、技術理解のための間口を広げる題材になりやすいです。

最初に選んだテーマは、「交通」のなかの「鉄道」でした。「鉄道」は、すでに趣味の対象になっており、当時の出版業界では不況に強く手がたいジャンルとされていました。
また、幸いにして、友人・知人には鉄道関係者がいました。運転士や車掌、駅員などの鉄道現場で働く人だけでなく、各分野の鉄道技術者がおり、専門的なことをいつでも聞くことができるありがたい環境があったのです。
「鉄道」を足がかりにして、技術解説の活動を始めてから、もう21年以上の年月が経ちました。現在の守備範囲は鉄道だけでなく、道路や自動車、モビリティ、都市へと広がっています。もとの専門である「化学」の知識は、電池技術に関係する燃料電池自動車や電気自動車、ハイブリッド自動車の書籍などに活用しています。
技術解説の精度を高める工夫
技術解説でもっとも気をつけていること。
それは、解説の精度(正確性)をできるだけ下げないことです。
近年は、わかりやすい解説が強く求められています。
しかし、これには大きな落とし穴があります。
それは、解説の精度が下がりやすいことです。
専門的な話は、やさしい言葉やたとえを使って解説すると、内容の正確性が下がりがちです。
解説する人が専門的な話を十分に理解していないと、その可能性は高まります。
実際にメディアでは、わかりやすさを優先するあまり、話を極端に単純化し、現実と乖離してしまった例が散見されます。
そのため私は、解説の精度を上げるために以下のプロセスを踏んでいます。
- 一次情報と現場を重視
- 文献を調査し、専門家に相談するだけでなく、可能な限りその現場を訪れる。そこで働く方々と対話して、まだ誰も書いていない「生」の情報にふれる。
- 咀嚼と最適な表現の探求
- 得た情報を自分のなかで咀嚼し、一般に伝わるかたちに再構築する。
- 専門家との綿密なすり合わせ
- 少しでも解説の精度が下がりそうになったら、専門家に相談し、正確さとわかりやすさを両立できる表現を探る。
この反復こそが、一定以上の精度をキープし続けるための、プロとしての矜持です。
おわりに

私は、こうした活動を通して、技術者と社会の対話をうながし、社会全体が抱える課題の解決につなげることで、社会に貢献したいと考えています。
これからも、現場の雰囲気とたしかな論理を大切にしながら、技術解説を続けてまいります。
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